コラム・指導日記④                     泣きの演技

すぐ泣けると天才子役、といった風潮がここのところあります。限られた撮影時間ですぐ泣けると、現場では確かに重宝がられます。また日本人は涙が好きですから、喜怒哀楽の中で「泣く」ことが一番重要視される傾向にあります。しかし、すぐに涙が出ない事にコンプレックスを抱く必要はありません。

 

■難易度でいうと感情表現では「笑い」の方が「泣き」よりも難しいと昔から言われています。急に大声で笑うというのも簡単にできるものではありません。無理に笑おうとすると、カタカナを読み上げるように「アハハハハ・・・」というようになってしまいがちです。果たして演技の中で喜怒哀楽をどう捉えたらいいのでしょうか。

 

■先日レッスンで、ある生徒に母親役を練習させていた時です。病気の我が子を何とかして欲しいと相手役に説得するシーンですが、「泣く」シーンではないのに大粒の涙をこぼしながらの演技になりました。「悲しい」という[形容詞]=[気分]を懸命に演じようとするのではなく、「説得する」という[動詞]=[行動]を懸命に演じることで、自然に感情が溢れて来たのですが、これこそが演技術の本流です。

 

■特殊技能として、短時間で泣けることも出来るに越したこと無いですが、演技術の本流をまずは充分経験することが先決です。役の人生の濃密な一コマを生きる、それが演技です。映画でもドラマでも、メイン役のオーディションでは、そのことが出来るかを審査員は見極めようとしています。一貫した役に数多く取り組んで下さい。それが実は俳優として一人前になる近道と言えます。