■映像・舞台ともに活動のフィールドとしている子役出身(3歳~)の女優に、中嶋朋子さんがいらっしゃいます。国民的テレビドラマと呼ばれた「北の国から」で22年にわたり螢役を務められ、以後、映画、舞台へも活躍の場を広げ、実力派として高い評価を得ています。他に、朗読、執筆、講演でも独特の感性を発揮。現在新国立劇場で上演している「リチャード3世」に出演中です。
■私の印象は、自身の感じ方に誠実な、感性豊かな女優さん。女優としてのあり方のルーツは、「北の国から」の撮影や倉本聰さんの影響が決定的といえます。
私が個人的に思い出すのは、事務所の合宿でネパールを訪ねた時ご一緒したこと。ヒマラヤをトレッキングしたり、ガンジス河の支流にあるヒンズー寺院「パシュパティナート」で火葬の様子を垣間見たり・・・、五感に刺すような体験の連続で、きっと感性豊かな彼女のその後に大きく影響したのではないかと思っています。
■仕事でご一緒して印象的だったのは、舞台劇「赤毛のアン」でナレーションをしていただき、制作として録音に立ち会った時の事でした。「こんなに楽しいナレーションは無いわ」と言いながら、モンゴメリーの描写したプリンスエドワード島の自然やアンの語るキラキラした「コトバ」たちを穏やかな口調の中に見事に描いていました。
■必ずしも中嶋朋子さんのように、子役から大人の俳優への成長がうまくいかないことが多いのはなぜでしょうか? 限られた時間内でリハや稽古して本番を迎える現状の中、小器用にこなせる事が求められ、ツボを押さえた演技ができる方が持て囃される子役たち。逆にそう言った子役っぽい子を嫌う監督も主に映画界にはいらっしゃいますが、子役タレントスクールの多くは、オーディションに即座に対応できるような器用さを最優先したメニューを繰り返しトレーニングさせています。でも、子ども時代、長年に渡り器用な作業の繰り返ししかやらずにいて、その後その道の第一線で活躍し続ける事ができるでしょうか?
出演の取り掛かりを得るための努力とともに、魅力ある表現者としての成長も大切にする・・・、これが長きに渡り広い活動をし続ける為のポイントといえるのではないでしょうか。